服部幸應のお誕生日の玉手箱

(その2)フカヒレスープ

フカヒレスープは正直もの

フカヒレスープは日本でもずいぶんとお馴染みになったが、これほどはっきりと味わいに差のでるものもない。
というのもフカヒレは、それ自体には味がなく、スープが命。そのためフカヒレスープにその料理人の腕も店の格も正直にでてしまう。
スープは広東省の場合、金華豚の赤身、地鶏、金華ハムなどを長時間かけて煮出してとる。材料をふんだんに使っているのに、スープは見事に澄んでいる。広東風では、スープにさっと湯がいたモヤシや黄ニラを浮かべ、また、紅酢(もち米、桂皮、八角などからつくられる)を入れて食す。
以前、めったに出会えないフカヒレスープを縁あって口にできたとき、あまりの複雑微妙繊細な味わいに、新しい食の地平を見た思いがしたものだ。

フカヒレはゼラチンのかたまり

フカヒレの歴史はそう古いものではない。清代の『随園食単』や『本草綱目拾遺』の料理の記述にでてくるが、上流階級で珍味として好まれたのは19世紀に入ってから。フカヒレは、まさにゼラチンの結晶みたいなもので、つばめの巣などとご同様、不老長寿の妙薬として歓迎されたと思われる。
日本やアジアで高級中華料理としてもてはやされるようになったのは、1980年代以降、経済成長に乗かってのことで、わずかここ20年かのことだ。

せっかく味わうなら

フカヒレというが、実際にはサメのヒレで、メジロサメ、ジンベイサメ、ヨシキリザメほかサメの種類はさまざま。ヒレには背ビレ、胸ビレ、尾ビレがあり、尾ビレが最高級とされる。
フカヒレの姿煮によく使われるのは尾ビレの部分が多い。一度カチンカチンにに乾燥させたものを水に漬けてもどすのだが、これに3日。これを何度も何度も水を変えて、皮をはぎ、肉を除き、洗いに洗いあげる。
上等のフカヒレは太く、長く、1本1本にハリがあり、つやつやと金色に輝く。

ひとつ私がアドバイスできるのは、フカヒレをせっかく味わうなら、ちゃんとした料理店を選んだほうがいいということだ。もちろん高価であることと、味のよさが必ずしも一致するとはいえないが・・・。本場で味わうときもよく店を選んで行くことをおすすめする。
私の香港でのおすすめは、『新同楽』『福臨門』。いずれも香港島と九龍に店がある。

服部先生おすすめのお店(フカヒレスープ)

●福臨門酒家

東京都中央区銀座6-13-16 銀座ウォールビル1、2F
tel.03・3543・1989 11:30〜14:30 17:00〜22:00/無休 要予約
HP:http://www.fukurinmon.com/

香港が本店の、あの有名な『福臨門酒家』(広東料理)の銀座店。何より素材の味を引き出すことが広東料理の神髄。福臨門はその最高クラスの店。この店の醍醐味は、その時に食べたいものを相談しながら素材や料理法を選べること。「分らないことがあったら、どんなことでもお聞きください」とお店の人。

●春秋

東京都港区南青山7-14-5 tel.03・3407・4683 18:00〜24:00 土・祝〜23:00/日休
HP:http://shunju1986.com/

ベースは上海料理というが、上質の材料をたっぷり使った料理は、ジャンルなど忘れてしまうほど、おいしさに説得力がある。1人前の注文でも何人分かのフカヒレを煮込む。そうやっていい味をだしている。宮内さん(オーナーシェフ)のお家でご馳走されている。そんな雰囲気のお店。お任せコースのみ。

●涵梅舫(かんめいほう)

東京都港区赤坂赤坂7-6-47 赤坂ニュープラザ1F tel.03・3224・1607 月〜土11:00〜14:30 17:30〜22:00 日17:00〜22:00
HP:http://www.kanmeihou.co.jp/

ここの料理を味わったとき、ほんものの中国料理に出会えたと思った。どの料理も上品で、繊細。そして夾雑物の存在を一切感じさせない。それはスープが上質であることと、料理人の力量の証し。味わいは複雑にしてシャープ。これ以外にこの料理の味つけはないと思わせるほど見事に決まっている。

フカヒレやアワビなど高級乾燥食材などは、気が遠くなるほど手間がかかる。惜しみなく手間をかけ、金華ハムなどを贅沢に使ったフカヒレスープは、どう逆立ちしても家庭では絶対出せない味。中華の真価が本当に味わえる店でこそ、堪能していただきたい。

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